序文にかえて

  紳士淑女の皆様、僭越ながら自己紹介させて頂きたい。かくいうこの我輩こそは、あるときは暗雲垂れ込める惑星プロメテリアの三つ目の人喰い巨獣に対し全く素手で立ち向かった<向こう見ずな>男として、またあるときは地球から惑星ペルセウスに向けて銀河史上初の有人仮定宇宙空間航行をした<無鉄砲な>男として、そしてまたまたあるときは銀河連合第百四十四太陽系宇宙軍大佐にして《俗称》火の玉師団隊長、十四個の銀河勲章と四十五個の惑星勲章、それに数限りない衛星勲章を貰った<命知らずな>男としてその名を全銀河に轟かしている、オースチン・スクェア・ワラオ大佐である。

 <向こう見ずで無鉄砲で命知らずな>我輩の大好物は冒険である。この宇宙に存在するいかなるものも我輩の好奇心をさまたげることはできない。軍を退いた今でも、「これはなにかあるゾ」と好奇心を擽られると一もニも無くすっ飛んでいってしまうのだ。

 そんな我輩の体験した数々の『不思議で楽しくてでもちょっとおっかない』話を聞きたがる諸氏が多く、我輩は色々な団体から講演をしてくれという依頼殺到で地球にいる時間の殆どを講演に使っているといっても過言ではない。我輩の美しいバリトンがガラガラになるのも至極当然のことだ。そんなおり銀河新聞社の勧めで――特に我輩の講演を聞きに来られない諸氏の為に――稚拙ながら我輩の体験談を書き記し広く楽しんで戴こうとしたものが本書である。

 なお、この体験談をまとめるのに手をかしてくださったすべての人――なによりもペルセウス大学院常任顧問のパパジアン・パパジアン・シュミット教授――の御厚意に感謝し、ここにペンを置くことにする。

                宇宙冒険家
                  オースチン・スクェア・ワラオ



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